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鋏しごとを訪ねて vol.2
時代の流れに合った独自技術の開発を セニングクシ刃砥石目切り  (有)坂井製作所
鋏しごとを訪ねて > Craftsmanship file #02
誰にでも作れるものは最初からやらない。
求められるのはオンリーワンの技術力。

セニングクシ刃砥石目切り
(有)坂井製作所 代表 坂井裕一さん

日本一の金物の街、新潟県三条市。道を歩けば鍛冶屋にあたるほどの金物の街で生き残るためには「独自路線で技術開発を追求すること」と言い切るのは、坂井製作所の坂井裕一さん。
坂井さんは、25年前に美容シザー作りに転身した。ちょうどその時期に周りでも美容シザー関連の事業に切り替える工場は多かったが、その頃から自社の強みを持つことが大切だと感じていた坂井さん。一般的に“ワイヤーカット”という量産方法で加工されていたセニングの刃を、クシ刃ひとつひとつを砥石で滑らかに切る“砥石目切り”で作ることにこだわり続けてきた。

坂井さんにしか出来ない砥石を使ったクシ刃目切りのファンは多い。

手間暇かかる“砥石目切り”は、量産することができない。しかし、坂井さんの手によって生み出されたセニングブレードは従来の悩みに多いカット時の髪のひっかかりやブツ切れによるダメージを最小限に抑え、その技術力が評価され、スタイリスト達から絶大な人気を誇っている。「ワイヤーはどこでもやれるだろ?だから、人様に任せて(笑)。うちではやらないよ」と語る坂井さん。常に現状に満足せず、メーカーやスタイリストからのささいな悩みや声をすくい上げて解消する方法を模索していく…テストと試作を繰り返してさらなる高みを目指す。「特許や意匠登録をして技術を守る工夫も必要」と坂井さんは語る。

上)磨き上げた技術力の特許申請・意匠登録も多数。
下)OKAWAのブレードに坂井さんの目切りを施した試作品。

刃物はワイヤーでなく砥石で作るもの。クシ刃と棒刃のすべて刃でできているのが理想。

坂井製作所では、鋼材に焼入れをした後に、刃付けをするため砥石で1つずつ切り込む。「セニングのギザギザのひとつひとつも刃だからね。ワイヤーだとブツ切りになる。砥石で刃付けをして、両側からせん断して挟み込むことで鋭い切れ味に仕上がる」。その言葉通り、坂井さんの目切りは刃と刃の隙間の溝までもするどい刃となっている。余分な力が加わらないため髪の断面も潰れることなく、きれいな丸のままだ。髪が傷まないということは、エンドユーザーのお客様の喜びにもつながっていく。手間暇惜しまず良いものを作り上げる−機械には真似できない職人魂の成せる技である。

スタイリストの意見を共有し二人三脚で商品開発していく。CADを使ってプログラムを制作し、どの部分を改良すればよいか試作を繰り返す。

OKAWAが惚れ込んだ坂井さんの砥石目切りの技術。実はOKAWAのセニングブレードには坂井製作所のクシ刃目切りの技術が必要不可欠。坂井さんの作り出す鋭角なクシ刃を最大限に活かすために高品質な鋼材を開発し、目切り後の仕上げ方にいくつもの工夫を施してOKAWAにしか作れないセニングシザー「Jシリーズ・Vシリーズ」を完成させました。

OKAWAで発売して間もなく大人気となったJシリーズは試作数150以上、開発には2年を要し、OKAWAの職人と坂井製作所が技術開発によって生み出された。「毛の逃げの抑制」と「やわらかな切り心地」を両立し、引き切り製作所をしても全く引っかからないと瞬く間に口コミで広がり愛用者が急増。「その時代のスタイリストが求めている声に耳を傾ける。私は切るプロではないからね。」と坂井さん。時代に合わせてシザーに求められることも変化する。その変化に合わせて坂井さんの研究開発は続いていく。

階段状の特殊な刃付けを施したブレードは大ヒット作。
「技術を守り継承するために規模が大きくなりすぎると
品質にムラが出る」と従業員3名の少数精鋭。
(有)坂井製作所 代表 坂井裕一
新潟県三条市出身。高校卒業後からものづくりの仕事に携わり、平成4年から櫛刃の目切りを始める。現在、約30ほどの特許・意匠登録を持っている。

スタイリストの悩みを解消!
これまでの常識を変えた
“Jシリーズ・Vシリーズ”

発売以来「これまでにない切り心地!」と愛用者が増え続けているJシリーズ。
特殊な階段状の刃を施し、引っかかりなく毛髪へのダメージを最小限に抑えるセニングシザー。坂井製作所の緻密な設計とOKAWAの職人で作り出した特別なブレードです。

ハンドル製造 (有)藤田合金製作所 代表 藤田正平 セニング目切り (有)坂井製作所 代表 坂井裕一